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第63話 私が出る

Author: 八月 猫
last update publish date: 2026-07-30 09:01:26

 仕事帰り、私は駅前で足を止めた。

 昨日一人で入った定食屋。

 その少し先にある不動産屋。

 ガラス越しに明るい店内が見える。

 営業時間はまだ終わっていなかった。

 私はしばらく立ち止まっていた。

 部屋を探す。

 昨日までは、まだ考えているだけだった。

 スマホで物件を保存して。

 家賃を見て。

 駅からの距離を見て。

 でも、本当に動くところまではいかなかった。

 悠斗は自分が出ると言った。

 あの部屋に私が残ればいいと。

 通勤にも便利。

 家賃も一人で払えないわけではない。

 家具も揃っている。

 生活を大きく変えなくて済む。

 たぶん、それが一番楽だった。

 でも。

 私はガラスに映る自分を見る。

 あの部屋に残って、本当に自分の生活を始められるだろうか。

 ソフ

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  • 『尽くしすぎたのでやめました。今さら後悔しても遅いです』〜帰らない人を待つのは、もうやめます〜   第9話 大丈夫の癖

    結局その日、私は一人でラーメンを食べて帰った。 本当はもっと洒落たものでも食べようと思っていた。 せっかく外食する気分だったし、少しくらい贅沢してもいいかなって。 でも店を探す気力がなくなってしまった。 駅前のラーメン屋に入り、カウンター席へ座る。「ご注文どうされますか?」「あ、醤油ラーメンで」 店員に答えながら、自分でも少し驚く。 私は本当は塩派だ。 でも悠斗が醤油好きだから、気づけば家でも醤油ばかり作るようになっていた。 私は箸を持ったまま、ぼんやり湯気を見つめる。 好きなもの。 最近、自分の『好き』がよく分からない。 ラーメンを食べ終えて店を出ると、夜風が少

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